新収益認識基準におけるサブスクリプションサービスの会計処理

以前に以下の記事でサブスクリプションサービスの会計処理について記載したことがあるのですが、最近実務絵新収益認識基準に準拠してサブスクリプションサービスの会計処理を検討することがありました。そこで、新収益認識基準におけるサブスクリプションサービスのサービス提供者側の会計処理について整理したいと思います。

以前の検討については以下を参照ください。

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サブスクリプションサービスとは何か?

改めてサブスクリプションサービスの定義ですが、NTT Communicationsによると、「ブスクリプションとは、商品の購入代金やサービスの利用料を毎回請求するのではなく、一定期間利用することができる権利に対して料金を請求するビジネスモデルです。一般的には、料金を支払っている間は自由に商品やサービスを利用することが可能ですが、契約が終了するとそれらは利用できなくなります。」とされています。

会計処理を検討するにあたってポイントとなる点は、一定期間定額で商品やサービスを利用するという点でしょうか。サービスを提供する企業側の会計処理を見ていきたいと思います。

なお、様々なサブスクリプションサービスについては以下を参照ください。

サブスクリプションサービスの会計処理は?

サブスクリプションサービスに関する基準の取り扱い

新収益認識基準の適用指針では、企業の知的財産に対する顧客の権利をライセンスと規定したうえで、ライセンスの供与に関する会計処理を以下の通り規定しています。サブスクリプションサービスも利用先企業の知的財産に対する顧客の権利であると考えられるため、サブスクリプションサービスは61項以下の規定に従って処理することになると考えます。

61. ライセンスは、企業の知的財産に対する顧客の権利を定めるものである。ライセンスを供与する約束が、顧客との契約における他の財又はサービスを移転する約束と別個のものでない場合には、ライセンスを供与する約束と当該他の財又はサービスを移転する約束の両方を一括して単一の履行義務として処理し、会計基準第 35 項から第 40 項の定めに従って、一定の期間にわたり充足される履行義務であるか、又は一時点で充足される履行義務であるかを判定する。
62. ライセンスを供与する約束が、顧客との契約における他の財又はサービスを移転する約束と別個のものであり、当該約束が独立した履行義務である場合には、ライセンスを顧客に供与する際の企業の約束の性質が、顧客に次の(1)又は(2)のいずれを提供するものかを判定する(第 66 項参照)。
(1) ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利
(2) ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利
ライセンスを供与する約束については、ライセンスを供与する際の企業の約束の性質が(1)である場合には、一定の期間にわたり充足される履行義務として処理する。企業の約束の性質が(2)である場合には、一時点で充足される履行義務として処理し、顧客がライセンスを使用してライセンスからの便益を享受できるようになった時点で収益を認識する。

62項より、ライセンスを供与する際の企業の約束の性質が、(1)ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利であれば、一定の期間にわたり収益認識し、(2)ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利であれば、一時点で収益認識するとされています。

これをサブスクリプションサービスに当てはめると、(1)サブスクリプションサービスの契約の性質がライセンス期間にわたって提供するサービスにアクセスする権利であれば、サービス期間にわたって収益を認識し、(2)サービス提供時点でのみのサービスを利用する権利であれば、一時点で収益認識をするとなっています。

そのため、多くのケースではサブスクリプションサービスは(1)のライセンス期間にわたって収益認識することになるかと思います。ただ、厳密にはサブスクリプションサービスであるライセンスを供与する際の企業の約束の性質が上記の(1)(2)のいずれに該当するかの判断が必要となります。次はその判定方法について見てみます。

「ライセンスを供与する際の企業の約束の性質」の判定基準

ライセンスを供与する際の企業の約束の性質の判定基準については、適用指針63項から65項に以下の通り規定されています。

63. ライセンスを供与する際の企業の約束の性質は、次の(1)から(3)の要件のすべてに該当する場合には、顧客が権利を有している知的財産の形態、機能性又は価値が継続的に変化しており、前項(1)に定める企業の知的財産にアクセスする権利を提供するものである([設例 23]、[設例 24-2]及び[設例 25])。
(1) ライセンスにより顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える活動を企業が行うことが、契約により定められている又は顧客により合理的に期待されていること(第 65 項参照)
(2) 顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える企業の活動により、顧客が直接的に影響を受けること
(3) 顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える企業の活動の結果として、企業の活動が生じたとしても、財又はサービスが顧客に移転しないこと

64. 前項のいずれかに該当しない場合には、ライセンスを供与する際の企業の約束の性質は、第 62 項(2)に定める企業の知的財産を使用する権利を提供するものである。

65. 次の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合には、企業の活動は、第 63 項(1)に定める顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与えるものとする([設例 25])。
(1) 当該企業の活動が、知的財産の形態(例えば、デザイン又はコンテンツ)又は機能性(例えば、機能を実行する能力)を著しく変化させると見込まれること
(2) 顧客が知的財産からの便益を享受する能力が、当該企業の活動により得られること又は当該企業の活動に依存していること(例えば、ブランドからの便益は、知的財産の価値を補強する又は維持する企業の継続的活動から得られるかあるいは当該活動に依存していることが多い。)

63項の規定は読んでも分かりやすい規定かと思います。サブスクリプションサービスに当てはめると以下の通りでしょうか。

63項の項目 サブスクリプションサービスへの当てはめ
(1) ライセンスにより顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える活動を企業が行うことが、契約により定められている又は顧客により合理的に期待されていること 一般的なサブスクリプションサービスであれば、利用期間にわたってコンテンツ等のサービスのアップデートが期待されていることが通常である
(2) 顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える企業の活動により、顧客が直接的に影響を受けること コンテンツのアップデートが行われた場合、利用する顧客側では享受する便益に直接影響を受ける
(3) 顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える企業の活動の結果として、企業の活動が生じたとしても、財又はサービスが顧客に移転しないこと コンテンツのアップデートが行われた場合でも、サブスクリプションサービスに関連するサービスが顧客側に移転するわけではない

63項の「知的財産に著しく影響を与える活動」かどうかは、上記の通り65項に規定されており、それも当てはめると以下の通りです。

65項の項目 サブスクリプションサービスへの当てはめ
(1) 当該企業の活動が、知的財産の形態(例えば、デザイン又はコンテンツ)又は機能性(例えば、機能を実行する能力)を著しく変化させると見込まれること コンテンツのアップデートは機能性を著しく変化すると考えられる
(2) 顧客が知的財産からの便益を享受する能力が、当該企業の活動により得られること又は当該企業の活動に依存していること(例えば、ブランドからの便益は、知的財産の価値を補強する又は維持する企業の継続的活動から得られるかあるいは当該活動に依存していることが多い。) サブスクリプションサービスから得られる顧客の便益は、コンテンツのアップデートにより決まる

上記の検討から、サブスクリプションサービスに関するライセンスを供与する際の企業の約束の性質は62項に規定されている(1) ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利であると考えられます。したがって、サブスクリプションサービスに関する収益については、ライセンス期間にわたり収益認識されることになります。

個々の検討によっては上記と異なるケースもあるかとは思いますが、一般的なサブスクリプションサービスであれば上記通りの検討になるかと思います。

まとめ

本日の内容をまとめると以下の通りでしょうか。

この記事で分かること!

✔ サブスクリプションサービスのライセンスを供与する際の企業の約束の性質が、(1) ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利、(2) ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利のいずれに該当するか判定する

✔ (1)であればライセンス期間にわたって収益認識を行う、(2)であれば一時点の収益として認識する

✔ 一般的なサブスクリプションサービスであれば(1)に該当し、ライセンス期間にわたって収益認識されることが多い

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