サブスクリプションの会計処理【サービス提供者及びサービス利用者】

最近流行のサブスクリプション型のサービスですが、サブスクリプションを利用している側もしくは提供している側の会計処理は契約形態によって様々です。

そのため一概にこうだと決めつけるのは難しいですが、一定の指針はあることから、それに基づき会計処理を調べてみました。

そもそもサブスクリプションとは何ぞやについては以下の記事を参照ください。

スポンサーリンク

サブスクリプションの会計処理

会計処理の説明の前にサブスクリプションの契約形態について理解する必要があるため、簡単に説明します。

サブスクリプションの契約形態

サブスクリプションは、モノの所有からサービスの利用への消費行動の変化により注目されるようになったサービスといわれています。そのため、従来型の売り切りの契約と比べて契約内容でも以下の点が異なります。

サブスクリプション 販売
契約内容 使用許諾や会員権契約 売買契約や請負契約
所有権 移転しない 移転する

これを踏まえてサービスを提供する側と受ける側のそれぞれの会計処理を見ていきたいと思います。

サブスクリプションの会計処理(サービス提供者の処理)

まずはサブスクリプションを提供する側の会計処理です。

現行の日本基準の規定

現行の日本基準では収益認識に関してあまり明確に規定されていませんでした。しかし、ソフトウェアに関しては日本公認会計士協会がソフトウェア収益実務対応報告というものを公表しています。そこでは以下の通り規定されています。

1 本実務対応報告の対象とするソフトウェア取引の範囲及びその特質

(1) 本実務対応報告の対象とするソフトウェア取引の範囲
本実務対応報告の対象とするソフトウェア取引は収益認識に関連するものであるため、研究開発費等会計基準に定めるソフトウェアの取引のうち、販売を目的として開発される次の取引を主として対象とする。
① 市場販売目的のソフトウェア取引
不特定多数のユーザー向けに開発した各種ソフトウェアの販売やライセンス販売(ライセンスの使用を許諾し使用料を得る契約)をいう。

2 ソフトウェア取引の収益認識

(1) ソフトウェア取引における収益認識の考え方
成果物を提供する取引における収益認識は、一般的には、一連の営業過程において販売が完了した段階、すなわち売手が財を引き渡し、現金や金銭債権の取得等により対価が成立した段階であるとされている。
① 市場販売目的のソフトウェア取引
ソフトウェア取引の特質からその内容の確認が難しいという中でも、市場販売目的のソフトウェア取引については、一般的に、企業(ベンダー)の側でその仕様(スペック)がすでに確定しているため、納品が完了した時点で実質的に成果物の提供が完了している。ライセンス販売においては、顧客(ユーザー)が使用することができる状態となった時点で実質的に成果物の提供が完了している。

引用元:ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱い(実務対応報告第17号)

この基準ではソフトウェアの販売を大きく2つに分けています。1つがソフトウェア自体の販売、2つがライセンスの利用を許諾する場合です。

サブスクリプションもこの2つに分けることが可能と考えられます。1つ目はサブスクリプションとは言っても実質的には完成したソフトウェアの提供である場合で、2つ目は1つ目以外の継続的なコンテンツ利用を前提とした契約の場合です。

ソフトウェア自体の販売

完成したソフトウェアをサブスクリプションとして提供する場合には、納品が完了した時点で成果物の提供が完了しています。そのため納品完了時に収益を認識します。このケースでは1年分のサブスクリプション代を計上することも可能であると考えます。

ライセンスの利用許諾

一方、完成していないソフトウェアやライセンスの使用を許諾する場合には、ユーザーが使用可能となった時点で成果物の提供が可能になると考えます。そのため、このケースでは毎月利用可能となった時点で収益計上することになると考えられます。

サブスクリプションの会計処理(サービス利用者の処理)

続いてはサブスクリプションを利用する側の会計処理です。

発生主義によりサービス提供を受けた分だけ費用処理する

サブスクリプションを利用する側が支払ったサブスクリプション利用料については、原則として期間に応じて配分する処理となります。

これは、会計上一定の契約に従い継続的に役務提供を受ける場合には、発生主義という概念に基づき当期に発生した(サービス提供を受けた)と考えられる分だけ費用として処理するとなっているためです。

例えば、3月決算A社が3年間のサブスクリプション利用料300万円全額をサービス提供開始時の2020年10月1日に支払った場合、2021年3月期にサービス提供を受けているのは2020年10月から2020年3月までの6か月分だけです。

そのため、2021年3月期で費用処理できる金額はサービス提供を受けた50万円だけ(=300万円×6か月/36か月)となります。残りの250万円は前払費用として翌期以降の費用となります。支払った300万円全額を支払った期間に費用処理できるわけではない点に注意が必要です。

なお、月次で支払っているのであれば毎月のサブスクリプション利用料を費用として処理することとなります。

ファイナンス・リース取引にはならない(リース資産計上はしない)

サブスクリプション契約により利用しているサービスが、会計上ファイナンス・リース取引として扱われることは原則無いと考えられます

それを、そもそもリース取引に該当するか、リース取引に該当した場合ファイナンス・リース取引に該当するかという観点で説明したいと思います。

リース取引に該当するか

会計のルール上、リース契約とファイナンス・リース契約は以下の通り規定されています。

4.「リース取引」とは、特定の物件の所有者たる貸手(レッサー)が、当該物件の借手(レッシー)に対し、合意された期間(以下「リース期間」という。)にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手は、合意された使用料(以下「リース料」という。)を貸手に支払う取引をいう。

引用元:リース取引に関する会計基準(企業会計基準13号)

リース取引であるためには「特定の物件を使用収益する権利を与え」という要件が必要になってきます。この点、サブスクリプションで利用しているサービスが特定の物件を指すかどうかは判断が分かれるところであると考えます。

ただ、仮にリース取引であったとしても次のファイナンス・リース取引には該当しないと考えられます。

ファイナンス・リース取引に該当するか

ファイナンス・リース取引に定義は以下の通りです。

5. 「ファイナンス・リース取引」とは、リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引で、借手が、当該契約に基づき使用する物件(以下「リース物件」という。)からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引をいう。

引用元:リース取引に関する会計基準(企業会計基準13号)

9.リース取引がファイナンス・リース取引に該当するかどうかについては、第 5 項の要件を満たす必要があり、その経済的実質に基づいて判断すべきものであるが、次の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合には、ファイナンス・リース取引と判定される。
(1) 現在価値基準
解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値が、当該リース物件を借手が現金で購入するものと仮定した場合の合理的見積金額の概ね 90 パーセント以上であること
(2) 経済的耐用年数基準
解約不能のリース期間が、当該リース物件の経済的耐用年数の概ね 75 パーセント以上であること

引用元:リース取引に関する会計基準の適用指針

上記基準からファイナンス・リース取引に該当するかどうかは主に2点ノンキャンセラブルとフルペイアウトという要件で判断されます。

ファイナンス・リース判断基準 ノンキャンセラブル フルペイアウト
内容 リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができない 当該契約に基づき使用する物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなる
具体的な判定基準 契約書にキャンセル条項があるか否か 現在価値基準

経済的耐用年数基準

これをサブスクリプションの契約に当てはめると、ノンキャンセラブルを満たす契約はあると思いますが、フルペイアウトの条項を満たすことはまずないのではないでしょうか。

フルペイアウトを満たすためには現在価値基準もしくは経済的耐用年数基準のいずれかを満たす必要があります。

しかし、サブスクリプションにより利用するコンテンツが、当該コンテンツを借手が現金で購入するものと仮定した場合の合理的見積金額の概ね 90 パーセント以上であること、もしくは解約不能のサブスクリプション期間が、当該コンテンツの経済的耐用年数の概ね 75 パーセント以上であることはまずないと考えられるためです。

例えば、車両を利用するサブスクリプションの場合、リースと異なり利用できる車種は様々であると考えられます。そのため、リース料(サブスクリプション利用料)が利用する車両全ての見積もり金額90%を超えることはまずないでしょうし、同様に経済的耐用年数の概ね75%であることも考えられません。

以上からサブスクリプション契約をファイナンス・リース取引として処理することは難しいと考えられます。

最後に

大分長文になってしまいました。最初にも述べましたがサブスクリプションの契約は形態により様々です。また、会計基準はサブスクリプションが流行る以前より整備されているものが多いです。

そのため、契約内容に応じて会計処理が様々となるでしょう。基準についてもこれから整備されると取り扱いが変わるものも多いのではないでしょうか。ひとまず現状整備されている基準で判断した点ご了承下さい。

新収益認識基準におけるサブスクリプションサービスの検討については以下を参照ください。

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

PVアクセスランキング にほんブログ村

スポンサーリンク

フォローする