2022年から生前贈与の基礎控除枠110万円が廃止される??

2021年分の大綱発表時に生前贈与の取り扱いが話題となりました。生前贈与の基礎控除枠である110万円を見直すかもしれないという旨の記載があったためです。そこで今日は、2021年分の税制改正の大綱は相続税の生前贈与についてどういう発表があったのか調べてみました。

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目次

生前贈与の基礎控除とは?相続税と贈与税の違い

相続税と贈与税の違い

今回の話を理解するにあたって、まず相続税と贈与税を理解しておく必要があります。国税庁によると、それぞれの定義は以下の通りです。

相続税とは、亡くなった人から各相続人等が相続や遺贈などにより取得した財産の価額の合計額が基礎控除額を超える場合に課される税金です。

一方、贈与税とは、個人からの贈与によって財産を取得した場合に、その取得した財産に課税される税金です。

相続税も贈与税も細かい規定はありますが、大まかに税金は以下の計算式で計算されることとなります。

相続税及び贈与税の基本的な計算の仕方

相続税・贈与税=(相続した財産もしくは贈与された財産ー控除額)×税率

相続税や贈与税はそれぞれ別々に税率が定められていますが、税率自体は贈与税の方が高くなる傾向になっています。それであれば贈与より相続を選択する方が合理的かと考えられるのですが、贈与税には生前贈与の基礎控除というものが認められています。

生前贈与の基礎控除とそれを利用した税金対策とは?

では、生前贈与の基礎控除とはどういった制度なのでしょうか。

上記の通り、贈与税は(贈与された財産ー控除額)×税率で算定されますが、原則として1年間の贈与財産のうち110万円までは課税しないというルールとなっています。

すなわち、贈与税=(贈与された財産ー110万円)×税率となり、この計算式から贈与された財産が110万円までであれば年間の税金が0円となります。この110万円控除できる部分のことを生前贈与の基礎控除と呼んでいます

しかも、この贈与税の基礎控除については贈与人数分が毎年認められることとなります。そのため、原則として相続が発生する段階(両親の死亡等)まで、非課税枠の贈与(110万円)を毎年繰り返すことにより、贈与税と相続税を抑えつつ資産の移転が可能となっています。

これが生前贈与の基礎控除を利用した税金対策と言われるものです。

2021年度税制改正大綱は生前贈与の基礎控除をどうすると言っているのか

上記を踏まえて、自民党が出した2021年分の税制改正大綱は生前贈与について以下の通り規定しています。

相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。

引用元:令和3年度税制改正大綱

生前贈与を直接廃止すると明言しているわけではなく、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点からそのあり方を見直すとされています。

その理由は以下の2点です。

1つは、日本では相続税より贈与税の税率が高くなることから相続税の方が選択されるケースが多く、また現状の贈与税の制度では財産の分割贈与を通じた負担回避を防止するには限界がある点

2つ目は、それに加えて高齢化も進んでいることから、高齢世代から若年世代の資産移転時期が高齢化しており、仮に資産移転を早期化できればより経済への活性化が期待できるため、資産の早期移転を可能とする税制が必要となる点

そのためには、相続か贈与かで税金が異なるようにするのではなく、諸外国のように通算して税金を計算できるシステムを参考にし、資産移転時期の選択に中立的、かつ意図的な税負担の回避が防止されるような税制を構築するとしているのです。

繰り返しとなりますが、生前贈与を規定している暦年課税制度のあり方を見直すとしており、生前贈与の廃止を直接明言しているわけではないようです。

ただ、贈与や相続のいずれを選択しても同額の税金となるような制度に変えるためには、その修正の過程で、贈与税の中でも相続時課税制度と比較して著しく有利な要因となっている暦年課税制度の生前贈与を変更することは十分予想されます。

暦年課税と相続税課税の違いはこちらを参照ください。

結局生前贈与の基礎控除は2022年から廃止されるの?

2022年以降生前贈与の基礎控除(110万円の枠)がどうなるか、これを書いている現時点(2021年10月時点)では未定です。しかし、2021年12月に出るであろう税制大綱では何かしらアナウンスがあるのではないでしょうか。その際には改めて確認したいと思います。

なお、贈与税・相続税ともにかなり細かいルールが設定されており上記以外にも様々な例外が設定されています。そのため、自分の贈与税や相続税が気になるという方は、上記を参考にするだけではなくお近くの税理士等に相談することをお勧めします。



「贈与税の暦年課税と相続時精算課税の違いとは?今後改正される?」はこちら

なお、税制大綱は毎年12月に与党から発表されます。去年のケースでは2020年12月21日に2021年(令和3年)の税制改正の大綱が発表されてるため、2022年(令和4年)分についても今年の12月に大綱が発表されるものと思います。翌年の大綱が発表された際には改めて確認したいと思います。

令和4年度の税制改正大綱にて生前贈与の廃止が見送りとなっています(2021年12月13日追記)

2021年12月10日に令和4年度の税制大綱が発表されました。贈与税のうち生前贈与の改正は見送りとなったようです。詳細は以下からどうぞ。

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この記事を書いた人

大手監査法人に勤務している会計士です!
会計基準、株式や不動産投資などのお金に関する情報を発信しています。

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