贈与税の暦年課税と相続時精算課税の違いとは?今後改正される?

以前、贈与税の生前贈与の110万円の基礎控除が廃止になるかもしれないという話を書いたのですが、その際に暦年課税と相続時精算課税の話が出てきました。相続税も勉強したのですが、この辺りはかなり分かりにくいと思いますので、改めて調べてみました。そこで今日は両者の違いなどについて書きたいと思います。

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目次

暦年課税と相続税精算課税とは

そもそも暦年課税も相続時精算課税も贈与税に関する規定です。特に相続時精算課税は言葉に相続とあるので分かりにくいのですが、贈与税に関する規定となります。それぞれの違いを以下の通り表にしてみました。

暦年課税相続時精算課税
制度概要その名の通り暦年(1月から12月)で贈与した資産に対して課税を行う制度贈与したタイミングではなく、相続発生時に精算して課税を行う制度
税金計算課税標準(贈与額ー110万円)×累進税率

課税標準の金額に応じて10%から55%までの8段階に分かれる

課税標準(贈与額ー2,500万円)×20%

税率は20%で固定

贈与時の条件誰でも可能その年の1月1日時点で60歳超の父母及び祖父母から20歳以上の子及び孫への贈与
贈与税の納税時期暦年で計算して納税特別控除2,500万円を超えた贈与時ごとに納税し、相続時に精算
制度移行暦年課税から相続時精算課税の移行は可能相続時精算課税を選ぶと、その後は暦年課税への移行は不可能
相続税との関係とその節税効果相続税とは切り離して計算される。ただし、相続開始3年前の贈与については相続税の相続資産に含まれる相続税の計算時に相続時精算課税された資産は精算される。なお、精算時の贈与財産の評価は贈与時の時価となる

相続時に相続財産と合算する贈与資産の価額は贈与時の時価なので、将来的に時価が増加すると予想されるものを贈与すると相続財産の圧縮ができ節税効果あり

暦年課税と相続時精算課税のメリット・デメリットは?

暦年課税と相続時精算課税の制度概要は上記の通りですが、それぞれのメリット・デメリットを比較した場合は以下の通りとなります。

暦年課税相続時精算課税
メリット年間110万円までの贈与については無税で実施できる。ただし、贈与後3年内に相続が発生した場合には相続税と通算される制度があり・必要なときに多額の資産を贈与することが可能

・将来値上がりが予想される資産については節税が可能

デメリット累進課税となっており多額の贈与には向かない相続発生時に贈与分が精算されることから税金支払いの先送りに過ぎず、予期しないタイミングで税金の支払いが必要となる可能性がある

日本の場合には、贈与より相続を選択されるケースが多いようです。これは、制度上贈与税より相続税の方が控除枠が大きく、税率が低く、結果として払う税金少なるなるケースが多いという理由もありますが、将来的にいくら支出が必要かわからないので先立って支出しにくい等の理由もあるようです。

そんな贈与税ですが、その中でも相続時精算課税の利用は更に少なくなっているようです。これの主な理由は、相続時精算課税を一度利用すると暦年課税に戻れない、暦年課税の110万円基礎控除が原則何年も使える、相続時精算課税では将来贈与した資産の価値が値下がりした場合に課税が不利になる可能性がある(なぜなら贈与時の時価で評価するから)といったところが理由となっています。

まとめ

自民党の2021年税制大綱にもありましたが、日本では贈与税は相続税の累進回避を防止する観点から税率が高く設定されており、生前贈与に対して抑制的に働いている点があるとされています。その結果、若年世代への資産移転が進まないといった問題になっています。

更に税制大綱では、その解決のためには、諸外国のように一定期間の贈与や相続を累計して課税するなどにより、資産の移転時期に関わらず税金負担が一定になり、意図的な税金負担回避ができる制度を目指すべきとしています。

そして、そのためには贈与税と相続税とより一体に捉えて課税する観点から、現行の暦年課税と相続時精算課税のあり方も見直すべきではないかと提言されています。

この様に提言されていることからも、この年末に暦年課税と相続時精算課税のあり方に何かしらの見直しが入るのではないでしょうか。何か動きがあれば、また解説したいと思います。

2022年から生前贈与の基礎控除枠110万円が廃止される?はこちら

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この記事を書いた人

大手監査法人に勤務している会計士です!
会計基準、株式や不動産投資などのお金に関する情報を発信しています。

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