IPO公開価格の設定方法に見直しが入る?過少値付け問題について

2021年9月14日付けの日経新聞に、IPOする際の公開価格の値決めの方法について見直しを行う動きがあるという記事が出ていました。具体的には公開価格の上昇を妨げる原因となっている仮条件設定の実務の見直しを検討しているようです。具体的にどういうことなのかを調べてみました。

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IPO公開価格決定のフロー

IPOする際の株式の公開価格の決定方法には入札方式とブックビルディング方式があります。

入札方式とは

入札方式とは、その名の通り一定期間の間に投資家が希望価格を入札し、その結果に基づき決定する方法です。これには、投資家が希望する価格で公開価格が設定されることから、時価に近い価格が公開価格になるというメリットがある一方、あまりに高騰して上場直後に暴落する可能性もあるというデメリットもありました。

ブックビルディング方式とは

それに対応する形で登場したのがブックビルディング方式です。これは、まずは①主幹事証券会社が企業価値より想定発行価格を算定し、②有価証券届出書発行後にロードショーを実施、③その後プレマーケティングを行い仮条件価格帯を決定、④最後にブックビルディングにより公開価格を決定するという方法です。

まったく意味が分からないのでもう少しかいつまんで説明すると以下の通りです。

ブックビルディング方式の流れ

①主幹事証券会社が自社なりで企業価値を算定し、発行予定株式数から1株当たりの想定発行価格を試算

②有価証券届出書発行後に会社が機関投資家を回って事業内容の説明を行う(ロードショー)

③その後、主幹事証券会社が機関投資家に対して妥当な発行価格や応募株式数等をヒアリングして(プレマーケティング)、主幹事証券会社が仮条件価格帯を決定して会社の取締役会で承認

④仮条件価格帯が決定した後、証券会社が投資家に対して購入希望価格や購入希望数量を調査することとなる。証券会社は顧客からの需要や申し込み価格の分布状況を勘案して、会社に対して公開価格の案を提示し、会社と協議して公開価格を決定する。

IPO公開価格の過少値付け問題とは?

上記がブックビルディング方式の値付け方法です。仮条件を決定した後に投資家の需要を考慮して公開価格を決定するのであれば、公開価格が実需に応じて決まるからいいのではないかと思われるかもしれませんが、現状はそうなっていません。

日本の場合、③の仮条件価格帯で設定した範囲でしか公開価格を設定しない実務があり、IPO事例の90%以上が仮条件価格帯の上限で公開価格が決定されています。IPO株については実需がほぼマックスのため、公開価格が常に仮条件価格帯の上限で設定されることになるのです。

その結果、多くの会社で初値が公開価格を大きく上回る状態に陥っています。IPO株の申し込みに人気が殺到するのはこれが理由です。

初値が公開価格を上回った場合、差分が利益となるため投資家やストックオプション保有者にとっては嬉しい状況ではあります。

しかし、会社からすると公開価格で株式を発行しているため、公開価格の分でしか資金を調達できません。より初値に近い形で公開価格を設定できれば、その分だけより資金を調達できたはずです。この資金調達で逸失がある点を、IPO公開価格の過少値付け問題と呼んでいます。

今後どうなるのか?

話し合いが始まったばかりであり、今後どうなるかは現状では未定です。

しかし、現状の日本のIPO公開価格の決定方法には上記のような過少値付け問題が指摘されています。この点について、諸外国では③仮条件を設定した後、④の実需確認で需要が大きい場合には仮条件価格以上での公開価格の設定が可能となっています。

そのため、日本でも諸外国を参考にして仮条件価格以上で公開価格設定をできるようにするのか、そもそも仮条件価格帯の設定方法を見直す動きがあるようです。

余談ですが、海外では日本ほど初値収益率(初値と公開価格の差益)が高くないようです。仮に日本でも諸外国のように仮条件以上に公開価格を設定できることとなった場合、初値収益率が下がることが予想されます。その場合、現在のようなIPO株人気の過熱ぶりも少しは落ち着くことになるのでしょうか。

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