消化仕入ってどういう取引なの?
売仕(うりし)や売上仕入とはどう違うの?
これらはどうやって会計処理するの?
百貨店などでよく行われている消化仕入ですが、その会計処理や内容をまとめています。
- 消化仕入の定義
- 消化仕入とはどういった取引なのか
- 消化仕入の会計処理(収益認識基準適用前後の会計処理)
消化仕入の定義
そもそも消化仕入の定義はどうなっているのでしょうか。消化仕入の定義を定めた基準はありませんが、一般的に以下のとおり認識されています。
消化仕入とは、百貨店が商品を顧客に販売する際、販売したのと同時に百貨店がその商品を納入業者から仕入たものとする取引をいう。別名売仕(うりし)や売上仕入(売上仕入)と呼ばれる。
消化仕入の最大の特徴は、仕入と販売が同時に行われるということです。
どうしてこういったことが生じるのでしょうか?消化仕入の特徴を見てみたいと思います。
消化仕入とはどういった取引なのか
消化仕入の特徴
一般的な商売であれば、販売会社は仕入先から商品を購入して在庫を保有します。そして、その在庫を客先に販売することから、在庫を保有するリスクを抱えることになります。
しかし、消化仕入では販売会社は客先に販売したのと同時に仕入取引を認識することから、在庫を保有しないまま商品を販売することとなります。
ではどうしてこういったことが可能になるのでしょうか?消化仕入が行われるケースを見ています。
消化仕入が利用される取引
消化仕入の代表例は百貨店です。
百貨店における百貨店と各店舗の関係は、あくまでビルの所有者とテナント(=店子)という関係に過ぎません。しかし、その関係を規定する契約が以下のとおり分かれていることが一般的です。
- 通常の賃貸借契約
- 取引高の数%を手数料として百貨店に支払う契約(消化仕入)
①のケースは分かりやすく一般的な賃貸借契約となります。スペースを借りている各テナント(各ブランドショップ)は月○○万円という形で百貨店に賃料を支払います。
一方②が消化仕入となります。各テナントは個人に販売した金額に応じて百貨店に対して手数料を支払うこととなります。
①となるか②となるか、②の歩合をどう設定するか、はたまた①②の折衷案となるかは、百貨店と各テナントの交渉や力関係で決まります。
消化仕入の会計処理
消化仕入の会計処理は収益認識基準の導入前後で分かれています。それぞれ見ていきたいと思います。
消化仕入の会計処理(収益認識基準導入前)
収益認識基準が導入される以前(2021年4月以前)は、百貨店は消化仕入を全額売上高として処理していました。
これは、会計基準で消化仕入の会計処理を定めていなかったことが理由となっています。また、ルールが存在しないことから、取扱高を大きくしたい百貨店の思惑などもあり消化仕入を全額売上高としていたと考えられます。
消化仕入の会計処理(収益認識基準導入後)
一方収益認識基準導入により消化仕入の会計処理が明確にされています。
消化仕入については代理人取引に該当する場合、純額(手数料部分のみ売上高経常)として処理するとされています。
代理人取引に該当するか否かは以下の3要件に当てはめて判断します。
- 約束の履行に対して主たる責任を有している
- 在庫リスクを有している
- 価格決定権を有している
そして消化仕入を代理人か否かに当てはめた結果は以下のとおりです。
以上より消化仕入は代理人取引に該当するとして、百貨店は手数料として受け取る部分のみを売上高として計上するとされています。
そのため、百貨店の多くは収益認識基準の導入時(2022年3月期の第1四半期)に消化仕入取引を純額処理に変更する旨の注記を行っています。
なお、代理人取引の考え方の詳細については以下を参照ください。