現金主義から発生主義に直してくださいと言われたけど発生主義て何?
現金主義とはどう違うの?
上場会社の子会社や、上場準備会社の監査でよくある指摘の1つに発生主義ができていないというものがあります。この発生主義とはどのようなものでしょうか。現金主義や実現主義との違いも説明します。
- 発生主義、現金主義、実現主義の定義
- 発生主義、現金主義、実現主義の共通点と違い
発生主義、現金主義、実現主義の定義
発生主義の定義
まず、発生主義の定義は企業会計原則において以下のとおり定められています。
発生主義とは、すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならないとする会計処理方法である。
発生主義は費用と収益のいずれにも適用される原則となっています。
そして発生主義のポイントは「発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない」という点です。これは、受け取った対価や支払った対価に相当するサービスを、サービスが発生した期の収益や費用として認識することを意味します。
具体例を説明する前に現金主義の考え方も見てみたいと思います。
現金主義の定義
現金主義の定義を定めた会計のルールは存在していませんが、一般的に以下のとおり考えられています。
現金主義とは、すべての費用及び収益を、その支出及び収入に基づいて計上する会計処理方法である。
現金主義も費用と収益のいずれにも適用される原則となっています
現金主義はわかりやすく、支出や入金が発生した金額についてそれらが発生した期間の費用や収益として会計処理を行うものとなります。しかし、一般に公正妥当と認められた会計処理ではないことから、監査法人の監査を受けるような会社で採用することは認められていません。
実現主義の定義
最後に実現主義の定義は以下のとおりです。
実現主義とは、収益は実現した時点で認識すべき考え方であり、財またはサービスを提供し、その対価として現金等価物を取得した時点で収益を認識する会計処理方法である。
実現主義は収益の認識においてのみ適用される考え方です。
①財またはサービスを提供と、②その対価として現金等価物を取得という2要件を満たした時点で収益を認識しましょうという考え方となっています。
発生主義、現金主義、実現主義の共通点と違い
発生主義、現金主義と実現主義の共通点と違いをまとめると以下のとおりです。
発生主義、現金主義、実現主義の共通点
発生主義、現金主義と実現主義の共通点は以下のとおりです。
それは、発生主義と現金主義は収益や費用のいずれにも適用される考え方であるのに対して、実現主義は収益のみに適用される考え方であり、費用には適用されないという点です。
費用における発生主義と現金主義の違い
費用における発生主義と現金主義の違いについて事例を用いて説明します。
事例は、2022年4月1日から1年間継続して賃貸契約を締結し、その賃料の支払いを2023年6月30日に行ったケースとなります。なお、3月決算会社であり、家賃は後払いとします。結論をまとめた表は以下のとおりです。
発生主義の考え方
発生主義では「発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない」とされることから、支出は行われいなくても、賃貸期間である2022年4月1日から2023年3月31日の費用として処理されます。
結果として、家賃は2023年3月期の費用として認識されます。
現金主義の考え方
現金主義では「すべての費用及び収益を、その支出及び収入に基づいて計上する会計処理方法である。」とされていることから、家賃は、支出された2022年6月が属する期間、すなわち2024年3月期の費用として処理されます。
制度会計上は発生主義で費用を認識する必要がある
発生主義と現金主義の考え方は上記のとおりです。
現金主義の方が費用計上の観点では楽でしょう。しかし、上場会社で適用される一般に公正妥当と認められる会計基準(制度会計)では現金主義は認められておらず、発生主義で費用を認識する必要があります。
以上、「発生主義とは?現金主義や実現主義との違いは?」という記事でした。