日本でも認められる?SPAC(特別買収目的会社)によるIPO上場

以前にも書いたのですが、私は監査法人でIPO準備会社の仕事をしています。IPO準備会社の一旦の目標はやはりIPO(株式市場への上場)を達成することです。そのIPOを達成するまでには、証券会社や上場市場の審査などクリアすべき項目が多数あり、IPOを目指してから上場までは最短でも2年以上かかるのが普通となっています。

そんなIPOですが、近年、一般的なIPOプロセスを経過しないSPAC(特別買収目的会社)によるIPO上場というものが再注目されています。今日はSPACによるIPO上場について調べてみました。

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SPACとは何か?

そもそもSPACとは、Special Purpose Acquisition Companyの略称で、日本語でいうと特別買収目的会社となっています。SPACはその会社自体が事業を持っているわけではない空箱となっており、あくまで特定の事業の買収のみを目的とした会社となっています。

では、このSPACでどのようにIPO上場を果たすのかSPACによるIPOスキームを見てみたいと思います。

SPACによるIPOスキーム

SPACによるIPOスキームは単純です。

①SPACを設立する

②SPACが上場する

③SPACが候補となる事業会社を買収する

通常IPO準備会社の場合、③の事業会社自体がIPOを目指すことになりますが、SPACによるIPOスキームの場合、SPAC自体が上場した後に事業会社を買収することになりますので、この点が通常のIPOスキームと異なることとなります。

アメリカでSPACによるIPOが注目されている理由

このようなSPACによるIPO上場が諸外国、特にアメリカで大きく注目されているようです(以下、政府の「成長戦略会議(第11回)配布資料」参照)。

2020年からアメリカで大きく伸びていますがこれにはいくつか理由があるようです。

①新型コロナウイルス感染症により企業がSPACによる買収を選択している

新型コロナウイルス感染症の影響により当初予定していた程の業績を獲得できなくなった企業が、通常のIPOプロセスを経ずにSPACによる買収を選択しているようです。日本でも上場審査において計画を達成できるかどうかは大きな要素を占めるため、そういったプロセスを回避できるSPACによる買収を選択しているケースが増えているようです。

②公開価格を相対で決めることができるため買収企業にとっても安定的に資金調達が可能

通常公開価格は証券会社やら機関投資家の状況を見て決定することになりますが、既に上場しているSPACとの間で相対で決定することができることから、通常の上場のケースよりも安定的な資金調達が可能となるようです。

なお、2021年現在日本の株式市場ではSPACによる上場は認められていません。政府の「成長戦略会議(第11回)配布資料」によるとSPACによる上場が認められているのは以下の国々の様です。

ただ、同資料によると日本でも現在SPACによるIPOの解禁を検討している様ですので近い将来SPACによるIPOが解禁されるのかもしれません。

SPACのメリット

このようなSPACですが、そのメリットは以下の点が挙げられています。

被買収企業側ではIPO審査の短縮化により短期で上場が可能

被買収企業側ではSPACにより買収が決定されるのであれば、通常のIPO審査を受けることなく上場することが可能となります。上場を目指している会社からすればこのような審査の短縮化による短期での上場はメリットになるといえます。

投資家側でも一定のルールの保護のもと非公開企業へ投資ができる

SPACは空箱で上場することになりますが、このようなSPACに対する投資では様々なルールが課せられます。例えば、上場してから一定の期間内に買収を完了しないといけない、上場により調達した資金の90%以上は信託しないといけない、買収企業の選定には株主の過半数の同意が必要となる、期限内に買収できなかった場合には利息を付けて返金するなどです。

これらの一定のルールにより投資家が保護されるため、保護されたルールのもとで非公開企業への投資が可能となります。

SPACのデメリット

一方でデメリットとしては、審査が十分に機能しないことによる点が挙げられています。

審査が十分に機能しない

SPACが投資先企業を調査するものの審査が十分であるとは言えないケースがあるようです。

例えば、アメリカの自動車メーカーであるニコラは2020年6月にSPACを使いNASDAQに上場しました。そもそも電気自動車メーカーであるテスラを想起させる名前や、GMなどとの業務提携により株価は大きく増加しましたが、ニコラ株を空売りしている投資家からニコラの技術に関して虚偽があるとの発表を受けるとニコラ株は大暴落します。2020年6月に上場してからわずか3か月ほどたった9月ごろの出来事でした。

一般的なIPOスキームであれば上場にふさわしくない会社の上場を防げたかどうかはわかりませんが、SPACでは審査が十分に機能しないという批判があるようです。

最後に

これを書いた2021年9月現在ではアメリカでもSPACによる調達額は落ちてきており一時ほどのブームは過ぎ去った感があるようです。しかし、依然としてSPACによる上場は行わており今後もIPOスキームの1手段としては残ることとなりそうです。

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