配当所得の税金はどれが安いか?総合課税、分離課税と源泉徴収の選択
先日知り合いが「所得税及び復興特別所得税の確定申告書の見直し・確認について」を受け取って修正申告書を提出した際に、税務署の方に配当所得の計算を指摘されたそうです。
私が申告書を作成した訳ではないのですが、配当所得の課税方法について会計士試験時代の勉強を思い出して再度勉強しなおしました。また、配当所得についてどの課税方法を選択すると税金が安くなるのか検討してみました。
そもそも配当所得とは
国税庁のHPによると、配当所得とは「 配当所得とは、株主や出資者が法人から受ける剰余金や、利益の配当、剰余金の分配、投資法人からの金銭の分配又は投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託以外のもの)及び特定受益証券発行信託の収益の分配などに係る所得をいいます。」とあります。
難しい言葉が並んでいますが、配当所得とは保有している株式や投資信託等から受け取った利益の分配金となります。
配当所得の税金
日本の所得税法上、配当所得は税金が課されることとなっています。
多くの人は上場株式を保有しているケースが多いと思いますが、上場株式の場合は配当金が入金される段階で既に税金が20.315%徴収されています。これを税法の専門用語で源泉徴収と言いますが、会社員の給与から予め税金が徴収されているのと同じものです。その趣旨は税金のとりっぱぐれを防ぐことにあります。
上場株式と非上場株式の源泉税率は以下の通りです。
所得税及び復興特別所得税 | 住民税 | 合計 | |
上場株式 | 15.315% | 5% | 20.315% |
非上場株式(概ね10万円超) | 20.42% | 0% | 20.42% |
非上場株式(概ね10万円以下) | 20.42% | 0% | 20.42% |
仮に上場株式を保有していてその株式から1,000,000円の配当を貰えることが決まったとしても、実際に手元に入る際には796,850円となっています。差額の203,150円の税金が源泉徴収されています。
確定申告するか、確定申告しないか(確定申告不要制度)
配当所得に関しては上述の通り、配当を現金で受け取った際に既に源泉徴収が実施されています。そのため、税務申告をしない確定申告不要制度という制度が準備されています。
特に確定申告をしない場合には自動的に確定申告不要制度が選択されて完了となります。そのため、上記のケースでは203,150円の税金が源泉徴収されて終了となります。
一方、確定申告して税金を再度計算する方法があります。それが次の総合課税と申告分離課税の制度となります。
所得税2つの計算方法(総合課税と分離課税)
そもそも税金を計算する確定申告とは、「毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた全ての所得の金額とそれに対する所得税及び復興特別所得税の額を計算し、申告期限までに確定申告書を提出して、源泉徴収された税金や予定納税で納めた税金などとの過不足を精算する手続です。」となっています。
確定申告を行う場合には毎年2月16日から3月15日までの間に申告書を税務署に提出して税金の計算を行う必要があります。
そのため、上記の配当所得についても確定申告を選択した場合には、配当所得に関する税金計算を行う必要がありますが、その際の計算方法には総合課税と分離課税があります。
総合課税と申告分離課税とは
総合課税とは他の所得と合算して課税する方法となります。一方、申告分離課税とは他の所得は区別して課税する方法となります。いずれを選択するかは納税者の自由です。
総合課税 | 分離課税 |
事業所得 配当所得 不動産所得 給与所得 山林所得 一時所得 雑所得 | 譲渡所得 山林所得 配当所得 退職所得 雑所得 等 |
ここまでの流れについては国税庁のHPに分かりやすい表がありましたのでリンクを貼っておきます。
総合課税を行うか分離課税を選択するかは納税者の自由なのは上述の通りですが、どちらを選択した方がお得なのかは、簡単に見てみたいと思います。
総合課税と分離課税どちらが納税額が少なくなる?
総合課税と分離課税のどちらを選択すると納税額が少なくなるかは以下の通りです。
表の見方ですが、負担税率とあるのが総合課税を選択した場合の負担税率となっており、源泉税率となっているのが源泉分離課税もしくは源泉徴収税率となっています。また、オレンジ色の部分が有利となる方です。
※所得税・住民税ともに配当控除の金額は1,000万円を境に変わりますが、表の便宜上900万円の箇所から控除率を変えています。また、住民税は大阪府及び大阪市のものを採用しています。
これを見る限り、所得金額が1,000万円(所得控除後)までの人は、所得税は総合課税を選択し、住民税は源泉徴収や分離課税を選択した方がお得となります。
そのため、年収1,000万円くらいですと所得税率23%の区分になる人が多いため、配当に関しては総合課税で確定申告を選択した方がお得でしょうか。一方、住民税に関しては何もせずに源泉徴収を受けて終わりにする方が納税額は少なくなります。
一方、それ以上の課税所得の人については源泉徴収や申告分離課税を選択する方が納税額は少なくなります。
まとめ
配当について年収が1,000万円くらいまでの人は所得税の確定申告をした方が納税額は少なくなるということです。確定申告はそこまで難しくないので少しでも税金少ない方がいいのであれば、確定申告をお勧めします。