先日知り合いから、会社設立の際に外部からお金借りて払い込みしてすぐ返済したら、自己資金無しで会社作れて、しかも銀行からも資金調達できるの?と聞かれました。
これ思いついたのすごくない?くらいのテンションで聞かれたのですが、これは「見せ金」と呼ばれる行為で違法行為となる可能性があります。このまま彼を温かく見守ってもよかったのですが、彼を犯罪者にするわけにもいかないので興奮する彼をなだめました。ということで、今日は見せ金の勉強です。
見せ金とはどういった行為か?
そもそも見せ金とは何でしょうか。Wikipediaによると以下の通りです。
見せ金とは、会社の発起人または取締役が、払込取扱金融機関以外の者から借入をして、これを払込金として現実に払込取扱金融機関に払い込み、設立登記後または新株発行の変更登記を終了すると直ちに払込金を引き出して借入金に返済する行為のこと
会社設立の際には資本金相当の資産を払い込む必要があります。しかし、この見せ金を利用すれば、手元に資本金相当の資産が無くても、資本金があるように見える会社を設立する事が可能となります。
ただし、上記の通り設立後すぐに資本金相当のキャッシュを返済に充てるため実際の資産は会社に存在しません。そのため、「資本金があるように見える」会社のみが残るのです。
見せ金が利用されるケース
見せ金が利用されるケースは主に以下の2つです。
- 会社を設立する場合
- 銀行から融資を引き出す場合
会社を設立する場合
1つ目は会社を設立する場合です。
現在では最低資本金制度が撤廃され資本金1円からでも会社を設立することが可能です。そのため、会社設立のため見せ金をする必要はないかもしれません。しかし、資本金の多寡はある程度会社の信頼を示すことから、多額の会社を設立したい際に見せ金が使用されます。
また、以前は最低資本金制度が存在したことから、株式会社を設立する際には1,000万円の資本金を準備する必要がありました。そのため、このお金を準備できない人が会社を設立する際にも見せ金が利用されていました。
ただ、2005年に最低資本金制度が撤廃されてからは、会社設立に多額の資金を準備する必要が無くなったため、現在では会社設立に見せ金が利用されるケースはほとんど無いのではないでしょうか。
銀行から融資を引き出す場合
最近で見せ金と言えばこちらを指すケースの方が多いような気がします。ただ、このケースでの見せ金とは会社法でいう場合の見せ金とは少し意味合いが異なります。
新しく事業を始める人が銀行に融資をお願いする場合には、自己資金と事業計画を銀行に提示する必要があります。自己資金は事業の本気度を示すため、事業計画は将来性を評価するためです。
よっぽど優れた事業計画がある場合は別でしょうが、自己資金をまったく準備しない人に銀行はお金を貸さないでしょう。そのため、銀行からお金を借りるには一定のお金を準備する必要があります。
しかし、準備するお金がない場合に見せ金を使用するのです。銀行に提示する自己資金の資料、例えば通帳等に用意した見せ金を預け入れ、融資を引き出した後に、その見せ金を返済するという方法をとります。
実際に見せ金を払い込んで会社を設立するわけではないことから、上記の会社設立の場合の見せ金をは異なります。ただ、やっていることは会社設立の場合と変わりません。いずれの場合も仮装払込です。
見せ金は違法行為か?
見せ金で会社を設立する行為は違法行為です。
資本金は登記事項であり、見せ金で架空の増資を登記すれば公正証書原本不実記載罪(刑法157条)に問われる可能性があります。
また、会社設立しなかったとしても、金融機関を欺く意志を持って見せ金で準備した自己資金を提示することは詐欺に問われる可能性もあるでしょう。ただ、金融機関もこの見せ金について注意を払っていることから、通帳の預金推移を確認する等一定の対策はとっています。
いずれにせよ違法行為となる可能性があることから見せ金をするのはやめましょう。