今日はKAM(Key Audit Matter)、日本語では「監査上の主要な検討事項」といわれているもののお話です。
KAM(監査上の主要な検討事項)って何?
KAM(監査上の主要な検討事項)とは、当期の財務諸表の監査において監査人が特に重要と判断した事項をいい、監査役等に伝達した事項の中から選択されるものとなっています。
監査人(会計士)が監査役等に伝達した事項の中から監査上の主要な検討事項を選んで監査報告書に記載することとなります。
会計士は、まず監査上の論点を色々考えて、その中から一定のものを監査役にお伝えして協議します。更にその中から会計士が特に注意を払った事項を監査上の主要な検討事項として監査報告書に記載することとなります。
なぜKAM(監査上の主要な検討事項)が必要になるの?
次にKAM(監査上の主要な検討事項)が必要とされている理由ですが、これは一言でいうと海外の監査報告書と足並みをそろえるためとなります。
海外でKAM(監査上の主要な検討事項)を導入した理由は、既存の監査報告書の情報価値を高めるというのが理由です。
これまでの監査報告書については、どの会社も基本的に記載内容は同じです。どの会社の監査報告書を見ても金太郎飴のように内容は同じとなっており、これにも一定の情報価値はあるものの、会社ごとの実情が何も分からず情報価値に乏しすぎるというのが導入理由の様です。
KAM(監査上の主要な検討事項)って具体的に監査報告書に何が記載されるの?
多くの会社では2021年3月期からの導入ですが2020年3月期から先行適用も可能となっています。
株式会社三菱ケミカルホールディングスが2019年3月期を対象として新日本監査法人よりドラフトで監査上の主要な検討事項を記載した監査報告書を受領しているようです。
三菱ケミカルホールディングスの記載内容としては新規に取得した事業の無形資産の測定、のれんと無形資産の耐用年数となっています。
ちなみに先行している海外の事例を見てみても、収益認識、固定資産の減損やのれんを記載している会社が多いように思います。
KAM(監査上の主要な検討事項)記載の対象となる財務諸表は?
記載の対象は以下の会社となります。
連結 | 単体 | |
金商法監査 | 〇 | △ |
会社法監査 | 当面不要 | 当面不要 |
四半期レビュー | × | × |
いわゆる上場会社を対象とした金融商品取引法監査でのみ記載が求められています。金商法監査において連結財務諸表の監査報告書で記載した場合には単体も記載が必要となっていますが、内容が同一の場合には記載は省略可とされています。
また、会社法については当面の間記載が不要とされています。四半期レビューについてはそもそも監査で無いため記載は不要とされています。
KAMについて監査役はどうすればいいの?
監査役についてはとりあえず待っていれば会計士の方からコンタクトがあるはずです。だいたい3月決算の会社ですとこれから8月にかけて年間の監査スケジュールを説明するイベントがありますが、その際に説明があると思います。
最後に
監査法人側からすればかなり詳細に記載する必要があるため多くの研修に時間を要している印象です。会社側としてもそれを補足するための会計方針、定量的及び定性的な情報を有価証券報告書に記載する必要があることから、ある程度の対応が必要となっています。そのため監査法人及び会社のいずれにも一定の対応が必要となります。
また、そもそもの目的である監査報告書の情報価値を高めるという点ですが、監査法人側で他社事例を共有するというケースが相次げば、結局監査報告書の金太郎飴化が進んで今と何も変わらないという懸念もあるようです。