新収益認識基準が導入されたけど、もう従来の工事進行基準は廃止されたの?
新収益認識基準が導入されて数年が経過しましたが、今でもこの質問を受けることがあります。従来の工事進行基準は廃止されたのでしょうか?今日はこの質問にお答えします。
工事進行基準が廃止されたって本当?
結論を先に記載すると、従来の「工事契約に関する会計基準」の工事進行基準は新収益認識基準の導入にともない廃止されています。しかし、「工事進行基準」の処理自体は表現をかえて新収益認識基準に引き継がれているというの正解となります。
まず、従来の「工事契約に関する会計基準」の廃止ですが、これは以下のとおり新収益認識基準90項により廃止が明記されています。
次の企業会計基準、企業会計基準適用指針及び実務対応報告は廃止する。
(1) 企業会計基準第 15 号「工事契約に関する会計基準」(以下「工事契約会計基準」という。)
(2) 企業会計基準適用指針第 18 号「工事契約に関する会計基準の適用指針」(以下「工事契約適用指針」という。)
では、工事進行基準の処理自体がなくなってしまったのでしょうか?
この問いに対する答えは、工事進行基準の処理自体は新収益認識基準に引き継がれているというのが正解となります。
従来の工事進行基準の会計処理
「工事契約に関する会計基準」で定められていた工事進行基準の会計処理は以下のとおりです。
「工事進行基準」とは、工事契約に関して、工事収益総額、工事原価総額及び決算日における工事進捗度を合理的に見積り、これに応じて当期の工事収益及び工事原価を認識する方法をいう。
上記の内容をまとめると工事進行基準は以下のとおりです。
その期の工事売上高=工事収益総額×その期の工事進捗度
また、工事進捗度を見積もる方法として以下が記載されています。
「原価比例法」とは、決算日における工事進捗度を見積る方法のうち、決算日までに実施した工事に関して発生した工事原価が工事原価総額に占める割合をもって決算日における工事進捗度とする方法をいう。
いろいろ書きましたが、今説明したこの「工事契約に関する会計基準」の会計処理は上述のとおりすでに廃止されています。
新収益認識基準における工事進行基準
新収益認識基準では履行義務の進捗度を見積もり収益認識する方法が採用
では、新収益認識基準では工事進行基準はどのような処理となっているのでしょうか。
まず、新収益認識基準では履行義務に応じて収益を認識することとされています。なお、履行義務とは簡単にいうと顧客との間で提供することを約束した成果物やサービスとなります。そして、従来の工事進行基準のように一定期間にわたり履行義務が充足されるものの会計処理は以下のとおりとされています。
一定の期間にわたり充足される履行義務については、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識する。
従来の工事進行基準のように一定の期間にわたって成果物を提供するようなケースは、提供する成果物(履行義務)の進捗度を見積り、その進捗度に基づき収益を認識するとされています。
履行義務の進捗度を見積もる方法
新収益認識基準では履行義務の進捗度を見積もる方法として2つ認められています。
- アウトプット法
- インプット法
それぞれの内容は以下のとおりです。
アウトプット法
アウトプット法は、現在までに提供した成果物と残りの成果物の比率で進捗度を見積もる方法です。指標の例として、現在までに履行を完了した部分の調査、達成した成果の評価、達成したマイルストーン、経過期間、生産単位数、引渡単位数等があげられています。
インプット法
一方、インプット法は、履行義務の充足のために使用されたインプットの総合計を求め、それに対して現在までのインプットの合計が占める割合により進捗度を見積もる方法です。インプット法に使用される指標には、消費した資源、発生した労働時間、発生したコスト、経過期間、機械使用時間等があるとされています。
そして、インプット法により進捗度を見積り収益を認識する方法は、まさしく従来の工事進行基準と同じ会計処理となっています。以上から、従来の工事進行基準は廃止されたものの同じような会計処理が新収益認識基準に引き継がれていることとなります。
まとめ
新収益認識基準では工事進行基準が廃止されたって本当?
という質問に対しては、
以上のとおり、従来の「工事契約に関する会計基準」の工事進行基準は新収益認識基準の導入にともない廃止されています。しかし、「工事進行基準」の処理自体は表現をかえて新収益認識基準に引き継がれているというの正解となります。
以上、「新収益認識基準では工事進行基準が廃止されたって本当?」という記事でした。他の新収益認識基準の記事は以下を参照ください。