新収益認識基準の導入によって新たに契約資産という勘定が出てきたけど、これって従来の売掛金とどう違うの?
そもそも契約資産って何?
- 契約資産と売掛金の定義
- 契約資産と売掛金の共通点と違い
契約資産と売掛金の定義
そもそも契約資産と売掛金とは何なのでしょうか。
契約資産の定義
契約資産の定義は、新収益認識基準10項に以下のとおり記載されています。
「契約資産」とは、企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利(ただし、顧客との契約から生じた債権を除く。)をいう。
契約資産の定義の「企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利」だけ抜粋すると、これは債権そのものと言えます。しかし、定義の後半で「ただし、顧客との契約から生じた債権を除く」とされています。
契約資産の判断基準
では、債権以外で「企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利」とはどう考えればいいのでしょうか?
これは、言い換えると収益を認識済ではあるが顧客の検収が未了のため債権ではない状態を指すこととなります。
まだ少し分かりにくいため具体例を見てみたいと思います。
契約資産の具体例
契約資産の代表的な例としては、工事契約のうち収益を認識した部分の対価があげられます。以下2要件をどう満たすのか見てみます。
- 企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利
- ただし、顧客との契約から生じた債権を除く。
契約資産の例:工事契約の対価
工事契約の対価の考え方は以下のとおりです。
工事契約は一般的に請負契約となります。新収益認識基準では従来の工事進行基準のように一定の期間にわたり収益を認識する方法が認められています。このような場合、請負契約に対して一定期間にわたり収益が認識されます。
そのため、まず①企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利という要件を満たします。
請負契約では目的物の引き渡しが完了するまでは客先との間で債権が生じません。目的物を検収しない限り客先がお金を払わないのは当然となるためです。
そのため、上記①で収益を認識した時点では、②顧客との契約から生じた債権ではないということとなります。
以上より、契約資産の2要件を満たすことから工事契約のうち収益を認識した部分の対価は契約資産に該当します。
売掛金の定義
一方で、売掛金の定義は財務諸表規則第15条に以下のとおり記載されています。
売掛金(顧客との契約から生じた債権その他の通常の取引に基づいて発生した営業上の未収金をいう。)
これは従来から考え方に変更はありません。
契約資産と売掛金の共通点と違い
契約資産と売掛金の共通点
では、契約資産と売掛金の共通点は何でしょうか?
それは、
これらはいずれも、営業に関連して企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利であるという点です。
いずれも提供した財やサービスの対価として受け取る権利という点で共通しています。
契約資産と売掛金の違い
一方で違いは何でしょうか。これはひとことで以下のとおりです。
売掛金が債権であることに対して、契約資産は債権でないという点が違いとなります。
契約資産と売掛金の使い分け
上記より契約資産と売掛金の使い分けは以下のとおりとなります。
- 原則として、営業関連の顧客に対する収益の対価は売掛金として開示する。
- ただし、まだ請求できる債権ではない場合には契約資産として開示する。
契約負債と比べて契約資産を開示される会社は、請負契約を行っているなどかなり限定的ではないでしょうか。
契約負債については以下の記事を参照ください。